「未知」


それは、訳のわからない未知の異質なものとして現れてくる。だから、それがいったい何のことなのか本人にもわからないのである。知りようがないのである。

とらえどころがないし、理由そのものが不明のままなのである。本来の自分の中にそうしたものが見つからないのである。だから、それをどう表現したらよいのかわからないし、それが意味するところが分からないままなのである。

だからそれは、自分でもよくわからない意味不明の行動や、揺れ動く感情の起伏、抑揚として現れる。カタチも理由もない感情として意識される。そして、そうしたことがいつの間にか常態化し、日常の風景となって行く。

しかし、それにしても、いったい何がこうした自分自身を動かしているのだろう。それが、自分でもよくわからないのである。言葉とか理屈で割り切れるものでも、また、理解できるようなものではないのである。もっと原始的な、情緒的で生理的なものなのである。

自分自身のなかにある意識の届かない世界、未知の、言わば肉体の記憶とでもいったいったものなのである。感情の起伏や、そのリズム、自分の中にあって自分でない、そして自分を支配している、そのリズムや抑揚といったものなのである。

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