「古代ギリシャの芸術」



彫刻。

それは自分自身の、主体としての自立した必然性から来るものではなく、特殊な外的条件が重なったところで、追い立てられ、押し出されて来たものである。むしろ、外的条件に支配され促(うなが)された受動的なものである。止むにやまれず、まことに致し方なく、そうなった生き方なのである。

だからそれは、自らの内部で生み出され、それが映し出されたものではなく(もともと何もないのを映しだすことなど出来ない)、自分の外にある自然との関係のなかで、その行為の中で感じられ、認め、確められて行き、そしてそれが表現されたものなのである。だからそれは、自然との関係の中で、自然のそのものの加工(彫刻)を通して映し出され、表現される。自己の精神というのが、自分自身の中で見つけることが出来ず、身近な自然の加工を通して、それが意識され、確められてゆく。



歌と踊り。。

歌や踊りは人間の精神の表現である。精神が、カタチや動きとなって現実の世界に現れたのである。だからそれは、現実の姿カタチを超えて、素通りして、透過して、広がっても行くし、伝わり、つながってゆく。精神は精神に問いかけ、お互いを知り、理解し、共鳴し、コダマし、つながって、同期して、アンサンブルとなって広がってゆく。こうしたことが、歌や踊りを通して人間同士をつなぎ、結び付けている。言葉以前の感じ方や、情感の世界が広がりつながってゆく。

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