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「春の風」



冬と同じ冷たい風ではあるが、真冬のような底冷えや痛さはない。また、夏の前の心地よい風とも違って、少し緊張するような、冷たさの残る風である。気温自体は冬の風の方が冷たいと思うのだが、湿気が多いだけ、春は冷たく感じる。ただし、痛さはない。刺すような感じもない。

むしろ、クールな風だ。身を引き締め、頭を冷やすような、清涼で爽快な感じの風だ。クールで、何かを求め、向い、いざなうような風である。冬の、祈りや眠りからめざめて、外の世界へと誘い、せかせるような風である。そうした、何かを暗示し予感してしまう、そんな風だ。

春、湿気を含んだ暖かい気団が南からやってくる。地表を覆い、そして冷やされる。それが、朝の直射日光で、地表間際の空気が暖められてカスミとなる。山々や、風景の輪郭が白っぽくかすむ。

春の輪郭はふっくらしていて、淡く柔らかい感じだ。それは、空気中の水蒸気のカスミと関係している。それらが、しっとりとした潤いを感じさせる。白いモヤ(靄)とは、うるおいのことなのである。春の空気の白さは、そうした、潤いのある、気温と湿度を暗示している。またそれが生命が現れる舞台ともている。

反対に、透明な薄青色の秋の空は、乾燥を意味している。地平線近くが白っぽく見えないのは、湿気(水蒸気)を欠くからで、また全体的に灰色っぽく見えるのは、夏から続く明るさというのが少しづつ薄れてゆくからである。

身体的な馴れというのが、気候の変化に少し遅れるからである。しかし、実際やはり、多少薄暗い。実際、太陽光がもっとも少ないし、また時間的にも少なくなってゆく季節である。そうしたことが人間の感覚に灰色っぽい感じを与えるのではないだろうか。

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