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サクラが散る。いっせいに、瞬間的な出来事である。しつっこいのは見苦しく、いさぎよく、鮮やかに、いっせいに散ってゆく。いつでも、どこでも、みんなと一緒。死ぬも生きるもみんなと同じでないと気が済まない。移ろい行く四季の狭間にあって、それも冬と春、死と生の間にある最高度の移ろいである。映り写って行く一瞬の出来事である。そうしたことが、日本人の美意識にピッタリくるのである。 それは沈潜から再生へと昇り行く、魂(たましい)の儀式なのである。それは自らの限りない罪の意識の滅却・封印であるとともに、見果てぬ理想と未来へと昇って行く精神の衝動であり、その指向するところを、サクラの散ってゆく花びらに託して見ているのである。散りゆく花びらのなかに、自らの罪を封印するとともに、明日への夢を見ているのである。 これは、儀式であり、追憶であり、はてしなき未来への衝動なのである。それは、自らのタマシイの宿るところであり、そしてまた、帰って行くところであり、そしてそれらが目指す永遠の場所なのである。それは、日本に生きるすべての者にとっての夢であり、追憶であり、心の拠り所なのである。それは、民族のタマシイであり、そしてその象徴なのである。 |
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