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| 何もかもが作り物で、人間の精神というのが消えていて、生きているという感じがしないのである。すべてが表面的な形だけで、外面だけがあって、中身が無い。まるで昆虫が脱皮したヌケガラのように。まるで生物のいない無機質な世界のように思えてくるのである。 そして、現実から切り離された妄想と感情だけが、気まぐれでわけのわからない遊びをくり返している。そこには現実的な意味での変化は何もなく、正面も背面も、前も後ろも、方向も必然性もない。現実と切り離されたところで、精神だけがさ迷いだして、ただよい、永遠の同じ遊びをくり返している。このような世界では、何も見えず、知り得ず、理解もできず、何一つ解決することもない。 だからよいのである。誰もキズつかないし、だれも責任を問われることがないから。みんなが、誰もかもがいつも変わらずに、ずっと同じままでいることが出来るのである。つまり、なにも変わらない。前も後ろもなく、目的も理由もない世界である。生きているのか死んでるのか、限りなく曖昧な世界である。イヤ、そんなことはどうでもよい世界なのである。そうやってみんなが楽しくうまく生きているのである。それが壊されはならないのである。 しかしこうしたことは、閉じた島国、歴史的に固定した民族と、地理的空間の閉鎖性の中でのみ起こり得る特殊な一時的現象なのである。 |
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