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2、そとへ。


彼女は何かと誤解をしている。勘違いしているし、間違っている。精神は外へ、現実の世界へ出て行かなければならないのである。そこで立ち止まって留まり、内にこもるということは、精神の死を意味する。だから外へ出るしかなく、出なければならず、出て行かなければならないのである。

にもかかわらず、彼女は閉ざしてしまった。なにもかも終わりにしてしまったのである。それを越えて、あるいは踏みにじっても進んでゆくべきところを、立ち止まって閉ざしてしまったのだ。これでは、なにもかもが終わりになってしまう。精神が死んで、自分というのが押し殺され、窒息させられ、生きたままで死んだも同然である。

ありきたりで、当たり前の、しらじらしくもわざとらしい、ヤラセとナリスマシが支配する、あまりに当たり前の、初めから何もかもが仕組まれ、分かり切った日常の世界へと戻ってしまう。だからそれは、死んだ精神の世界なのだ。とっても楽(らく)でたのしく、何も苦しまず悩みもない。そうした、自分を閉じて殺した、死んだ世界なのである。

戻る。                     続く。


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