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月夜。



月夜の薄暗がりの中、ぼんやりしていて、とりとめなく何かしらケジメというのがなく、そうだ、この「ケジメ」というのがないのだ。自分と他人の区別があいまいで、というのも、それは自分だけの一人ぼっちの世界だからである。

世界というのが、おぼろげにかすんで見えて来て、その輪郭だけが薄ぼんやりと浮かんで見えている。ものの表面の「陰」も、ものが落とす「影」もよく見えない。世界を映し出す光というのが非常に弱く、ぼんやりしているのである。イヤ、そうではなくて、光源そのものがないのである。

光源としての太陽の光が直接届くことがなく、月がその光を反射して照らしているに過ぎないのである。「光」と「私」との間に月が介在している。光は月の反射としてしか届かないのである。そしてそれは光のコピーでしかないのである。それは、光そのものではなくて、光が映し出した幻影に過ぎないのである。

それは内閉的で孤独な自己の世界である。閉じて、こもっていて、自己と現実との間に壁が設けられ、区切られ、そして孤立した世界である。光源がないので中心となる基準も見つからない。自分自身が求める方向がわからず、自己の精神のよりどころとなる基準が見つからないのである。


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