index < 日誌 w. 目の中。18-76「夢の世界」


 
1、灰色。



夜、電気を消して目をとじていると真っ暗な闇の世界というようにはならない。ほんの少し、少しだけ白色の混じった濃い灰色の世界が見えてくる。

真っ暗だと目が開いているのか閉じているのかわからないし、目が何かを見ているのか見ていないのか、目が生きているのか死んでいるのかさえも分からなくなる。なにも見えないとはこのことである。見る見えない以前に自分に目があるのかどうか、自分が生きているのか死んでいるのか、わからなくなる。これでは自分を自覚することができない。

自分と他人の区別ができない。自分というのを意識することすらできないのである。だから、少なくとも目が何かを感じているということだけは意識されていなければならない。だからほんの少しだけでも何かが見えていなければならない。それも、なるだけ最小限の刺激で負担が少ない方がよい。だから黒でも白でもなく「濃い灰色」の世界なのである。

はてしのない空想と思いつき、偶然だけが支配する、自分の主観的な観念だけが無限に跳梁(ちょうりょう)する自分だけの一人ぼっちの世界。それがまさしく夢の世界である。だから、目を閉じていても意識がはっきりしているときは目は何かを見ている。実際には何も見ていなくても、目は何かを感じていると思えてくるのである。思えて来なければならないのである。


戻る。               続く。

index < 日誌 w. 目の中。18-76「夢の世界」