index < 日誌 < v 夢の中。<18-78「人影」 |
目を閉じると濃灰の薄暗がりが見えてくる。真っ暗だと意識が覚めていても、なにかを見ているという感じがしないし、実際に何も見えるはずもなく、そもそも、それ以前に自分の視覚器官が機能しているのか、視覚そのものが自分にあるのかどうかさえ疑わしくなる。 だから、非常に弱い光を含んだ闇の色、つまり薄暗い濃灰の世界が見えてくる。薄暗い闇の世界の中を、どこからともなく非常に弱い光が入って来ていて漂っているのである。 この薄暗い世界の中に薄灰色の雲模様が見える。とりとめなく、つかみどころのない輪郭が、あてもなく、わけもなく広がっていて、そして漂い動いている。そして、それがやがて何かの線となり、境界となり、輪郭やシルエットとなって、まるで何かの姿や形として思えて来る。実際、だれかの姿のように思えてきて、そしてそのように見えてもくる。 雲模様の薄灰色の輪郭といったものは、何にでも誰にでも、そしていつでもどこにでもありそうな模様なのであって、それがまるで誰かの人影のように浮かんできて、そしてそのように思えてもくる。うつむき加減の、とっても、とっても、うらやめしそうな顔をして、いつでも、どこでも、ずっと、ずっと僕を見つめ続けている。そして、それがいったい誰なのか、僕にはわからない。たしかめようがないのである。 |