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証明。



自分が内面と外面に分裂した。
社会という現実に生きる自分と、自意識という観念の世界に生きる自分とに分裂した。主体性は確立された。自己はめざめ、自覚された。もはや、外部のだれからも干渉されることのない、永遠の自由、自己という精神の無限の可能性が獲得されたのである。

自分の外からやって来て、有無を言わせぬ強制力でもって追い立ててゆく法律やシキタリ、習慣といったもの。そして常識や、日々の何気ない暮らしのすべてについて、果てしのない底なしの疑惑をいだくことになる。

それらすべてを自分自身の良心と経験、信条に基づいて主体的に考え、決め、行動するようになる。習慣と化した無意味で外面だけの、内容のない空虚な現実の、本当の真の実体というのが見えてくる。

迷信と幻覚が消える。赤は赤だし、黒は黒として見えてくる。偏見と思い込み、あるいは、外からやってくる「そうであるはずだ」とか、「そうでなければならない」といったことが、なんの根拠もない押し付けだと思えてくる。

実際そうなのである。それは自分の考えでも意志でもなく、ただたんに外からやってくる押し付けと強制に過ぎなかったのである。すべては自分自身の主体的な考えや、自分の経験や記憶でもって判断し行動しなければならない事柄だったのである。

そうして見ると世の中から歪みや霧が晴れてきて、非常によく見えるのである。そして自分自身というのも見える。けっして離してはならない、そして譲り渡すことのできないもの、それが、自分が自分であることの証明なのである。

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