(  市)ルネサンスへ<2015-0626-b



月夜。


月夜の、薄暗がりの中、ぼんやりしていて、
とりとめなく、なにかしらケジメというのがなく、
そうだ、この「ケジメ」というのがないのだ。
自分と他人の区別があいまいで、というのも、
それは自分だけの、一人ぼっちの世界だからである。

世界というのが、おぼろげにかすんで見えて来て、
その輪郭だけが、うすぼんやりと浮かんでいる。
ものの表面の陰も、ものが落とす影もよく見えない。
世界を映し出す光というのが非常に弱く、
ぼんやりしているのである。イヤ、そうではなくて、
光源そのものがないのである。

光源としての太陽の光が直接届くことがなく、
月がその光を反射して照らしているに過ぎないのである。
光と、私自身との間に、月が介在している。
光は月の反射としてしか届かないのである。
そしてそれは、光のコピーでしかないのである。
それは、光そのものではなくて、
光が映し出した幻影に過ぎないのである。

それは内閉的で孤独な自己の世界である。
閉じて、こもっていて、自己と現実との間に壁が設けられ、
区切られ、孤立した世界である。
光源がないので中心となる基準も見つからない。
自分自身が求める方向がわからず、
自己の精神のよりどころとなる基準が見つからないのである。

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