(  市)ルネサンスへ< 2016-1229-c  四季、



秋の色。


地平線が青いのは、秋の空である。そしてその青色が、
それがそのまま天空にまでのびている。地平線から天空にいたる
空全体にわたって、グラデーション(濃淡)といったものがほとんど
見られないのである。これが、秋の空である。

それは初冬にも見られる透きとおるような青さである。
乾燥していて、地表面に水蒸気がなく、地平線が天空と同じ
青色に見えるのである。これが透き通るような印象を与えている。
祭りのような夏が過ぎて、その後でどこか遠くを見つめていて、
そして誘われているような気になって来るのである。

もはや感情の抑揚の浮き沈みもなく、鮮やかさも盛衰も消えて、
生き生きした生命の躍動も、人生の輝きとその没落も、
そんなことは、もはやどうでもよくなって、もはや取り戻せない
過去のものとなってしまった、そんな色。灰色混じりの色である。

そしてまた、西日の黄色がうすく混じった何か抗しがたく
やりきれない、そんな色でもある。何かをあきらめ、断念を迫る
ような、そんな色である。過ぎ去って行くだけの、もはやどうにも
ならず、後戻りもできず、どうしようもなく、どうでもよくなって
しまった、そんな色である。  

気温はちょうどよいくらいで、夏とくらべると湿気というのが
格段に減っている。だから凌ぎやすい。そしてまた、遠くの
景色がよく見える。空が高く、透き通って見える。夏のように
にじんで見えることも、春のように水蒸気のシロ色が混じる
こともなく、冬のように青色が混じって冷たい覚めた感じにも
ならない。

灰色のやや黄色混じりの世界である。祭りの終わりを告げる
ような、全体的にかすんでくすんだ灰色混じりの、さびれた
感じの色である。灰色の、色が弱くなってかすれて、くすんだ
ような色、まるで自分の記憶の世界を見ているような色、
これが秋の色である。

 戻る。              お終い。
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