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「幻覚」

目の視野の最も端の隅の方から、誰かが近づいてきて僕を見つめている。そんな気配を感じてふと振り向くとただのカーテンだったり、掛けかけた服だったり、背もたれの少し大きい椅子だったりして、まったく薄気味が悪い。

これが一人ぼっちの深夜の部屋であれば、まったくヒヤリとする。しかしこうしたことが日常茶番事というか、いつもの例のようになっている。誰かが僕を見つめている。のぞいている。後をつけてきて呑みこもうとしている。まるで影のように。僕が落とした影が僕を呑み込み食べようとしている。

いつでも、どこでも、どんなときにも僕にまとわり付いて来て離れず、僕を見つめ、覗き込み、そして僕を呑み込もうとしている。いったいどちらが本当の自分なのか分からなくなって、呑み込まれそうになる。

現実を生きる僕の肉体が、だれか他人のもののように思えて来て、僕はいったい誰なのか分からなくなる。

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2019-1121-1129