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職場、〜2-1 存在。


僕は、彼女を目では見ていたけれども、彼女の心を見過ごしていたのではない だろうか。見えないでいたのではないだろうか。イヤ、いつも見ようとしていたし、 気づかい、理解しようともしていたのである。しかし、でも、よくわからないのであ る。何か一番大事なことを見落としていたのではないかと思えてならなくなるの である。

そうしたことが彼女をして、どこか遠くの、もはや僕たちの手の届かない世界へと 追いやっている、僕たちを捨てて行くしかないようにしている、そう思えてくるのである。彼女の面影だけが残り、彼女の心はもはや、どこか僕たちの知らない 世界へといってしまう、そんな気がしてくるのである。それがたまらず、どうにもならず、めまいがしてきて、心臓がキリキリ削り取られてだれかに食べられて行くようで、とても痛くて苦しいのである。彼女の心が僕たちから離れて行く。僕たちの気づかない間に。

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