「職場」〜3 かぐや姫。
これでは、まるで「かぐや姫」だ。もともと僕たちとは違う世界の住人だったのだ。だから、そしてまた、戻って行くしかなかったのだ。僕からもっとも大切なものが壊れて、離れて、消えてゆく。もう届かない。イヤ、届いてはならなかったのだ。これは僕の夢であって、夢は夢のままで、ずっとそうであり続けなければならなかったのである。それは永遠の夢の世界なのである。 僕を駆り立て、追い立て、まとわりついて離れず、僕を夢中にした、僕にとって何よりも大切なもの、僕自身の良心といったもの、生きている意味といったもの、それが象徴としての彼女(K夫人)だったのである。 それは僕にとって、まばゆく光かがやく夜の灯台であり続けた。そしてそれが、いまにも消えてしまいそうに瞬(マタタ)いている。はてしない暗闇の中の、ほのかな、最後のともしびのように。 だから、またそれが、限りなく美しく神聖な、貴(トウト)いもののように思えてくるのである。自分のすべてを賭してもなお、守らなければならないもののように、思えてならなかったのである。それは自分の良心、生きている意味そのものなのである。僕のタマシイといってもよいものだったのである。 戻る。 続く。 |