～３ 祈り。
| 女性的なもの柔らかなしぐさや言葉使い、そのリズムやカタチ。おだやかで優しく包み込むような、そんな情緒や感覚の感じ方、そうしたもののすべてが、すぐそこにある。華奢(きゃしゃ)で、いまにも壊れてしまいそうなｶﾗﾀﾞつきで、だれかが、強い男の力でそっと、そっと支えて守ってやらないと壊れてしまう、そんな美しさなのである。 そしてそれは、男には無くて、そして男にとってもっとも飢えた部分なのである。はてしのない、届かない世界なのである。それは光であり、ほのかな明るさであり、生きている感覚の潤いなのである。永遠の夢のような願いなのである。柔らかく、ふっくらしていて、そして優しく包み込むような、自分がその中で溶けてしまいそうな、そんなおだやかな暖かさである。 それは僕にとって見れば、暗く閉ざされた心の中を照らし出す、輝ける灯台のような存在であり続けたのである。それに導かれ、誘われて、そしてそれしかなく、それだけが確かな希望であり続けたのである。心の闇を貫く一条の導きの光であり続けたのである。 それは僕のもっとも大切な良心であり、信じるもの、祈りであり、ただ一つの救いであり続けたのである。なんとしても、どんなことがあっても守り通さなければならない、自分自身の良心、生きているという自分の証しであり続けたのである。それ以外に確かなもの、信じるものなど、この世に無いと思えたのである。自分のことなど、もはやどうでもよいと思えたのである。 自分が生きている意味や理由といったものが、そこにしか無いと思えたのである。僕の肉体も、そして精神も。ただ、彼女の優しさや美しさを守るためだけに、自分は生きているのだと思えたのである。それしかなく、それが自分の生きている理由のように思えたのである。自分が生きているとは、このことなのである。そうしてのみ、僕は自分が生きていることの意味といったものを見つけることが出来たのである。自分の肉体も、そしてその魂(たましい)も見つけることが出来たのである。 戻る。 続く。 |