~2 めざめ。
しかしまた、だからこそ、自分のすべてを賭けてもなお、守り通さなければならないものなのである。それはだれにとっても、そして自分にとっても、もっとも大切な良心なのである。何としても守り通して行かなければならない、自分たちの良心のすべてなのである。 それはまた、自分が生きている、生き続けなければならない理由でもある。自分自身の存在の理由なのである。自分が自分であろうとする限り、そうならざるを得ず、それは僕自身の良心であり、自分が生きているということの意味なのである。自分にとってみれば、それ以外に何も無いのである。僕にはそれしか無かったのである。 現実に対する限りない異和感と、底無しの猜疑心。いったい、現実そのものがマヤカシとヤラセだけの、白々しい偽りの世界ではないか。僕にとっての真実の世界とは、まさにこの良心の世界、そうした祈りと願い、救いの世界以外に無かったのである。 それしかなく、これだけは何としても守り通さなければならない、それは僕の、本当の真実のすがただったのである。そして、それを僕は、彼女の後ろ姿に見ていたのだと思う。それは僕にとってみれば「良心」の問題であった。僕自身の生きている根拠、理由といってもよい。失われ、忘れられていた何かが僕の中でめざめ、そして僕は、それに気づいたのである。 もちろん、僕と彼女とは何の関係もないし、反対に、何かプライベートな関係などあってはならないし、しかしまた、そんなことは僕にとってどうでもよいことだったのである。なぜなら、それは僕自身の、僕だけのプライベートな問題だったからである。 戻る。 続く。 |