index <  日誌 < K夫人:目次 27、妄想。


〜2 偏見。

そして、僕が自分にめざめたとき、そこには彼女がいて、彼女だけがいて、そして彼女しかいなかったのである。この職場に女性は彼女しかいなかったのである。僕は彼女に夢中になった。僕にとって彼女がすべてであり、彼女だけが僕のすべてとなったのである。

もちろん、それは始めからわかっていたことである。これは幻(マボロシ)なのだと。僕の自分勝手な思い込みと偏見が作り出した、妄想なのだということを。しかし、そんなことは初めからわかりきったことであって、僕にとって見れば、いままで何度も、何度もそういう同じことをくり返し続けてきたのである。むしろ、それ自体が目的となっていたのである。

だからよく知っている。夢はどうせすぐに壊れるし、そして目がさめる。これは自分の妄想が作り出した、理想化された女性像に過ぎないのだ。そんなことは現実にはないし、あってはならないし、あるはずがないのである。それは僕自身が、だれよりも一番よく知っていることなのである。

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