index <  日誌 < K夫人:目次 44、「予感」



〜2 異和感。

現実に強い異和感をいだき続けていて、自分が、自分だけがいつも、現実の外の世界の人間のように思えてくるのである。だから自分で自分の現実を求めて出て行くしかなかったのだ。

はじめて「彼女(K夫人)」を見たときもそうだった。イヤ、僕がそうなのではない。僕には、彼女が外の世界の人間のように見えたのである。彼女が現実とは別の世界を生きている、と思えたのである。少なくとも僕にはそう見えたのである。

現実が彼女と僕たちを引き離し、どこか遠い、僕たちの手の届かない所へと彼女を連れ去ろうとしている。彼女が僕たちから離れて行く。僕たちは置き去りにされ、捨てられ、そして忘れられてしまう。僕たちと彼女のキズナが切断され、そして、僕が僕で無くなってしまう。

僕の目の前から彼女が消えてゆくと共に、現実から僕が消えてゆく。僕の理由と意味が失われてゆく。自分がだれか分からなくなって、魂だけが肉体を離れて、どこか見知らぬ世界を求めてさ迷い続けている。そうした、自分自身の中にある精神の世界を、彼女がいる現実の世界に見ていたのである。

 戻る。                        続く。

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