index <  日誌 < K夫人:目次 53B、「相性」



〜1B透明。

彼女は非常にマジメであった。異性関係において特にそうだった。異常に神経質なほどであった。男性だけという職場環境がそうさせたのかも知れない。しかし、後から考えてみると、そうした彼女のマジメさ、正直さ、――マヌケで、どこかズレていて、アホなところ、――純真で非妥協的な態度が、僕をして何かとっても純粋なものを感じさせ、めざめさせたのだと思う。一種のカルチャーショック(異文化の衝撃)と言ってよい。

彼女の心の中が見える、そう思えたのである。純粋で透明で曇りや陰りがなく、非常に透き通っていて、まるで透明な水の中をのぞき込んだ時のように、クッキリと見えてくるのである。何を考え、何を思い望んでいるのか、非常にわかりやすく、直(じか)に直接見えてくるのである。まるで、小学生の女の子のように。

僕には、そうした彼女のいる風景が、実に不可解で不思議な情景であり続けた。50過ぎのオバサンがなぜそう見えるのか僕には理解できなかったのである。僕にはそうした経験がなく、理解のしようもなく、驚きもし、戸惑い、ためらい、当惑しながらも、いつも一歩退いたところから彼女と接するしかなかったのある。まるで別世界の住人と接するように。そうした不思議な異和感みたいなものが彼女にはあったのである。

 戻る。                        続く。

日誌  <  目次。