index <  日誌 < K夫人:目次 54、「相性」



〜2 思い込み。

大人特有のズル賢さや、相手の利害のスキをうかがうといったことがなく、また、そうした陰りや曇りがなかったからこそ彼女の心の中が、まるで透明なガラスの中を見るように、実に、よく透き通って見えてくるのである。

反面そうした、つまらなく、くだらない大人の話しが出来ない。いつもどこか途中で墜落しているか、いつのまにか話からそれてしまっていて、一人で黙り込んでしまう。イヤ、会話に入って来たくてそういう話をするのだが、よこしまなスキをうかがうということがない。これでは話が進まないのである。「大人の話し」とはこういうことなのである。それが彼女には出来ないのである。

もともとそういう話が苦手(にがて)なのか、 全然関心がなく興味もない。だからムリに話しを合わせようとするのだが、結局いつも話が噛み合わない。彼女自身、もともとそのように出来ていないのである。どこか非現実的でヌケたところがある。

ヌケているのは、だれもが多かれ少なかれそうなのであるが、彼女の場合それが利害の妥算や欲得の話が出来ない、という所に現れている。これが彼女の性分というものなのだろう。それが彼女の気質や気性、性格といったものなのだろう。

もともと彼女自身がそのように出来ていて、そのようにしかなれず、そこから出てゆくということがないのである。そして、それこそが彼女であり、彼女自身であり、彼女にしかない個性そのもの、彼女を動かしている「理由」のように思えてくるのである。

そして、それこそが彼女自身が信じるところのものなのである。信条とか良心、モットーなのである。心の中が見えてくるというのは、こういうことなのである。もちろん、それは僕の自分勝手な思い込みと偏見に過ぎないのであるが・・・・・・。

 戻る。                        続く。

日誌  <  目次。