index <  日誌 < K夫人:目次 64、「象徴」



〜3 タマシイ。

だからまた、彼女は僕にとって、現実の彼女とは別の存在になってしまった。理想化され、象徴となって、現実を超えた存在となったのだ。現実の、その向こう側にある魂(タマシイ)の象徴となったのだ。祈りや希望そのものとなったのだ。それは、現実から離脱した精神の領域の出来事なのである。

そうして現実の彼女は、僕にとってもはやどうでもよい存在となってしまった。僕にとっての彼女は、現実の彼女とは別の存在になってしまった。それはケジメだったのである。そして僕は現実と、その向こう側との間にあるこの境界線を越えてしまったのである。僕はケジメという、この越えてはならない一線を越えてしまったのである。

それは始めからわかっていたことであって、妄想は妄想でしかないのである。それは越えてはならず、越えられるものでもないものだったのである。そして、おろかにも僕はこの境界線を越えてしまった。白状してしまったのである。またしても。

いま考えると、それはある意味でとっても失礼な話で、僕は現実の彼女に向かって、彼女とは別の人を相手に話をしようとしていたのである。現実の彼女を無視して、僕が理想化した空想上の彼女に話をしようとしていたのである。だから、いきなり彼女がおこりだしたのも実にもっともというか、当然のなりゆきだったのである。


 戻る。                         続く。

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