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~6 イミテーション。

僕はやはり一人ぼっちで、世界中のだれに対しても、僕は、僕だけは別の世界を生きているのである。現実と僕の間には深い溝(みぞ)があって、現実から見ると僕は見知らぬ異国人に過ぎないのである。僕の学生時代がそうだった。そして社会人になって以降もずっとそうであり続けたし、今もそうである。僕は、どこかみんなと違う異人種・異民族に過ぎないのである。

すがたカタチは周りのみんなと同じなのに、心の中は、全然別の世界を生きている。感覚も感じ方も考え方も、あまりに周りのみんなとかけ離れている。常識ではあり得ないはずのものが生きていて、ここに居続けているのである。しかしまた、だからこそ出て行くしかなかったのである。

ワケもわからず、自分が何であるかも知らないまま。そしてまた、自分を見つけ、自分が自分であるために。自分で自分を生きて行くために。あーっ、もうたくさんだ。ウンザリだ。目的もなく、ワケもわからずアテもないまま、それでも出て行くしかない、そうやって生きて行くしかないのである。

それとも、このまま暗闇のままでよい。心の中は真っ暗でもよい。表面だけでも、せめてそれだけでもみんなといっしょであれば、それでよいのだ。表面だけでも、体裁だけでも、まばゆく光り輝いていてくれさえすれば、それでよいのだ。何もかもがウソのままでも、イミテーションでも、そのままで何も変わらずにいてさえくれれば、それでよいのだ。だれも傷つけず、誰もがおもしろおかしく、そして楽しく生きて行ければそれでよいのだ。それだけで十分なのだ。

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