~5 破壊。
僕の彼女に対する想いや心情といったもの、そして僕自身の願いや良心といったものがズタズタに引き裂かれ、生きたまま生き埋めにされてしまった。まるで、生きたまま棺桶に放り込まれて外から鍵を掛けられたようなものだ。二度と目覚めて来るなと目隠しされて、生き埋めにされたような想いだった。いま思うと、それほどまでに彼女は、僕にとって大切な存在だったのである。 そして、その彼女が僕を見捨てたのである。あんなにも可愛らしく、純粋で素直な彼女が、僕を捨てて、僕から離れて、僕の手の届かないところへ遠ざかって行ったのである。ののしり怒り狂いながら・・・。僕は破壊された。 僕には、もはやどうにもならず、手のほどこしようもなく、どうにかなるような方法も、すでに無くなっていたのである。あんなにも優しく、美しく、魅力的な彼女であったにしても、僕はもはや、僕もまた、彼女を拒絶し離れて行かなければならない。それが世間の最低限のルールでありマナーなのだ。他人がイヤがることをしてはならないのである。 そうして僕はまた、閉ざされた心の闇の世界へと戻って行くしかなかった。僕は、やはり一人ぼっちだったのだ。心の暗闇の中でほのかに浮かんで見えた灯(ともしび)も、やはり幻(マボロシ)でしかなかったのだ。ワケもわからず、自分が何たるかも知らず、なにも見えず、なにも感じず、それでも何かを手さぐりで探し求めて来たのに。しかし、それもやはり、幻でしか無かったのだ。 闇の中から僕を照らし出し、明るい光の下に映し出したかにみえた彼女の笑顔は、やはり幻でしか無かったのだ。僕は再び自分を閉じて深く沈んで行くしかなかった。僕はやはり、彼女から見るとワケのわからない別世界の住人でしかなかったのだ。 戻る。 続く。 |