〜2 いざない。
自分が誰で、何のために生きていて、そして自分の理由や意味といったものが、それなりにわかって来たように思うのである。そうした意味で、やはり彼女は僕にとって天使であり続けるだろうし、そしてまた僕を、外の世界へと導いてくれた女神でもあったのである。 たしかに、固く閉じていた僕の心というものが、彼女を通して外の世界を垣間見ることになったのである。 僕は、本当の自分の姿といったものを見てしまったのである。現実を生きている自分ではなくて、それを意識している自分というものの正体を見ていたのである。ぼやけた深い霧の中から、あるいは、果てしなく遠い空のかなたの世界に、忘れられ、失われていた「自分」というものを強く意識したのである。現実の中に自分自身というのが存在しない以上、それを求めて出て行くしかなかったのである。 そして、心はすでに外の現実へと向いている。もはや二度と振り向いたり、後戻することはないだろう。僕は自分自身にめざめ、自分の現実を生きている。もはや閉じこもったり、下を向いたりして現実を拒絶することもないだろう。 そうして僕は自分というのを新たに発見し、そして新たな自分自身の道を歩いて行くことになる、そうするしかないのだろう。イヤ、正直いうと、もう歩きたくない。疲れるし、人生を楽しみたいし、手抜きしたい。ラクしたい。ウソでもいいからそのままで、せめて表面だけでもいい、みんなといっしょに楽しく生きて行きたい。しかし、ここに自分の居場所がない以上、出て行くしかないのである。 これは仕方のないことなのである。だれにも相性というのがあって、僕はやはり、出て行くしかない人間なのである。シキタリや、習慣や、何の変化もない化石のような日常は、僕には到底向いていないのである。それに耐えられるようには出来ていないのである。そんな不自由な生活は僕には出来ない。 戻る。 続く。 |