ルネサンスへ<  目次。<  K夫人-86、「永遠」



〜3 天使。

そうだ。たしかに彼女は僕にとって天使であり、輝ける太陽の光なのだ。これからも、たぶんずっとそうであり続けるだろう。あ〜っ、こんなことを彼女が聞いたらなんとキモチの悪い事だろう。彼女でなくても誰が聞いてもやはりキモチ悪い。しかし、やはりそうなのだ。僕は彼女を通して外の世界を知ることになり、そして僕が気づいたときには、僕はもう外(そと)の現実の世界にいたのだから。そうやって僕は自分というのを知ることになったのだ。現実を生きている自分というのを。

やはり、僕は一人ではなかったのだ。そしてそれこそが救いであり、祈りだったのである。暗い闇の底で何も見えなかったにしても、やはり光はどこかを射していて、照らしているのである。そして僕もまたその中の一人だったのだ。だからこそ、願いもしたし祈りもしていたのである。また、そうしてのみ、自分というのが救われもしたのである。

もちろん、そんなもの始めから、どこにもないのかも知れない。しかし、ウソでも妄想でもデッチあげでも何でもよいのである。「信じる」ということが、ただそれだけが僕にはどうしても必要だったのである。だから、やはりそれは、祈りであり願いなのであって、それ無しには人間というのは生きて行けないのである。そして、そうした自覚や自意識といったものは、彼女が僕に教えてくれたものだったのである。

彼女は美しい。「美しい」とは、理想と現実が一致したところにある。しかし、そんなものあるはずもなく、あってはならないものなのである。だからまた、「美しい」とは夢の中にしか存在せず、そしてまた、夢の中でこそ永遠に生き続けるのである。だから、やはり彼女は僕にとって心の扉だったのであり、そしてそれを優しく開いて導いてくれた、限りなく美しく、そして優しい天使だったのだ。これからもきっと、そうであり続けるだろう。僕や僕たち、そしてみんなの心の中で永遠にそうであり続けるだろう。

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