「異人種」
〜9、めざめ。
生きている現実というのが、生き方や感覚や、生活のリズムといったものが、それまでとは、まったく別のものとして自分に迫ってくる。別の意味を求め、迫り、立ち現れている。 今まではただ単に、わずらわしく、しらじらしく、わざとらしく、何もかもがヤラセの世界だったものが、それとは全然別の、異質な、新しい意味をもって自分にせまってくる。 現実というのが、外の自然や、あるいは自分自身の感覚や生活といったものが、それまでとは全然別の意味を持つにいたったのである。あるいは、それまで気づかず見えずにいたものが、見えてきたのである。自分にとって直接の本当の意味がである。 習慣や、情緒や、常識は、そしてまた、自分が生きているということは、外からの権威の押し付けではなくて、自分自身が生きていることの表明なのであって、自分自身の精神の中で反省し、了解し、知り得たものでなければならないのである。つまり、自分自身というものの表明であり、個性であり、そしてまた、自己の人格の承認を求めているのである。そうやって精神は、自分自身にめざめたのである。 |