「暗示」
〜4、別世界。
ここで一つ、どうしても断(ことわ)っておかなければならないことがあるが、認識とは観念の世界であって、ということは、現実の世界というのは、それを見る者の立場、目的とか理由などによって、様々にその意味が違ってくるということである。関心の持ち方や興味のある部分も違ってくるし、また、見え方や感じ方も違うし、そしてまたそれの記憶に残る印象もまた、自分自身の中にある無意識の都合によって大きく異なってくる、ということである。 本来、現実とは、自分とは別のものなのであって、そして人間はいつも無意識のうちに自分自身の都合と目的、生き方や求めるものの印象に従って現実を見ているのであって、そしてそれだけがいつのまにか記憶として残って行くのである。 外の現実と、内なる観念の世界とはもともと別のものなのである。ということは、自分の理由というのが、現実とは別の世界にあって、そこから現実をながめて見ると、現実というのがそれまで見て感じていたものとは、まったく違ったものに見えてくるということである。すがたカタチは同じでも、その意味するのがまったく別のものに見えてくる、ということである。 |