「暗示」
〜5、裂け目。
これはだれにとっても仕方のないことなのであって、ただ本人がそれに気づくことがない、無意識の世界ないし「感じ方」そのものの世界なのである。それまで気づかなかったことが見えてきて、また、それだけが強く強調されるのである。 だから、同じものでも別のものに見えたりするのである。同じものを異なる角度と視点から見ているのである。あるいは、異なる動機や目的から見ている。そうして本来同じのものであったものが、全然別のもののように見えてくるのである。現実の同じものが全然別の意味と理由を持つにいたったのである。 そしてそうしたことが、物かげや暗がり、あるいは空気の裂け目や、シルエットの輪郭の途切れとぎれになった明暗の境い目などに、なにかを象徴するものとして感じられても来るし、印象として残り、何かの符号としてそれを暗示し示唆するものとして迫(せま)っても来るし、感じられ、そしてまた、見えてもくるのである。 |