「夢の世界」
〜1、不明瞭。
気まぐれと思いつき、思い込みの世界。たしかなものなど何一つ無い世界。確かだと見えても、それがいつも変わり移って行くのである。なぜか? 自分と他人の区別がないからである。現実の世界のような、自分に相対して存在するものが何もないからである。夢の世界では、存在するのは自分だけである。だから、自分を制約し縛(しば)り付けるのは何もなく、自分は何にでもなれるし、どんなことだって出来るのである。そうしたケジメの無い世界、それが夢の世界である。 だから夢の中では、自分は誰にでもなれるし、それが許されるし、相手と自分の間を自分自身が行ったり来たり、出たり入ったりしている。そうした非現実の空想だけが支配する世界である。 実は現実との接点がないというのが、この夢の世界の特徴で、現実との接点がないがゆえに自分が何にでもなれるのである。普遍でも、客観でも、主観でもなく、それ以前の、現実とのいかなる係わりも持たない、持ちようのない、責任もリスクも負担も何もない空想だけの世界である。だから、どんなことでも出来るし、やってしまうのである。精神が現実から切断されたところで、一人ぼっちの孤独な遊びを繰り返しているのである。 まるで、時間と空間の制約から解放された無限の、永遠の世界をさまよい続けている。ケジメがなく、前後の脈絡もなく、出来事の因果関係も成り立たない。そんな、どこまで行っても曖昧でぼんやりしたままの世界である。自分と他者の区別がハッキリしない。なぜか?自分に対峙するはずの、自分が自分として自覚されるはずの、現実との接点がないからである。 |