「夢の世界」
~5、領域。
カタチとは、自己と他者を区別する境界面のことであり、その境界線の独自のカタチが、他者とのかかわり方を決定しているのである。この場合の自己とは、自分が属している社会のことであり、他者とはそれ以外の外(そと)の社会のことである。だから、精神のカタチの違いが、他者とのかかわり方の違いとして現れてくるのである。 それではしかし、他者としての外の社会が存在しない場合いはどうだろう? これが、いわゆる「夢」の世界なのである。自己と他者とのハッキリした区別が無いのである。曖昧(あいまい)で、ぼやけて、自己と他者が互いに出たり入ったりしている。というよりも、自己認識そのものがきわめてあいまいなのである。他者の存在しない世界に自意識は成り立たない。自分の認識のしようがないからである。だからまた、自己認識はどこまで行っても曖昧にならざるを得ない。 自己意識というか、自己の内面世界というか、プライバシーというのが、きわめてあいまいで、ハッキリせず、ぼやけたままなのである。自分と他人の間に、精神の境界線が存在しないのである。自己の精神の領域がわからないままなのである。だからまた、人格も人権も理解されない。 こうした世界、閉じたシステムの世界にあっては、自分で自分を意識したり、のぞき込むといったことがなく、むしろ、自己意識は限りなく希薄で不用なもの、そしてまた、あってはならないものとされる。自己意識そのものが、このような閉じたシステムとは相容れないからである。 |