「条件反射」

〜2、リズム。


8月中ごろまでの日差しは上昇し続ける威力であり、9月のそれは、下降し続け弱まる威力なのである。だから、同じサイズの同じ強度の威力といっても、その意味するところは全く異なるのである。8月のそれは破壊の前兆としての暑さであり、9月のそれは破壊の終息としての暑さを意味しているのである。例えば春と秋とでは、気温と湿度が同じでも、やはり、どこか違うのである。また、それが肌にも感じられるのである。

同じ温度なら春の方が暖かく、秋の方が寒く感じられる。それは、春が寒い冬の続きから感じていて、秋が暑い夏の続きから感じているからである。つまり、同じ温度を寒さの中で感じているか、暑さの中で感じているかの違いである。人間は、生きている時間の流れの中で暑さ寒さを感じているのである。人間には、現実の直接の感じ方以外にも、移りゆく時間の方向としての感じ方があるのである。

それは温度だけでなく、現実の出来事や、うつりゆく現実の世界のすべてについて言えることなのであって、このような自分の中での気分の移り変わり、イントネーションや抑揚、そしてその時間的な流れゆくリズムを「情緒」といっているのではないだろうか。そしてこの意識されることのない「情緒」が人間を支配し動かしている。また、それ自体が自分自身の自律性とつながっている。

もどる。             つづく。