「条件反射」

〜3、自然環境。


人間は、自分の肌や五感で感じる寒さや暑さ、しのぎやすさ、きつさといったものを、ただたんに機械的に、無機的に感じているのではなくて、それを情緒として、五感のリズムとして、そしてまた、心の移り変わりと、そのあり様としてとらえている。そうやって生きている。また、そのように感じてもいる。もちろん、それは本人が意識せずにではあるが。これが無意識の世界である。また情緒の世界でもある。

言い換えると、人間は、それと意識することのない世界で、そしてまた、あるいは、本人の意識が届かない無意識の、無自覚の世界ですでに何か得体の知れないものに支配されている。そしてこの、何か得体の知れないものとは、自分を支配し包みいだいて、自分を自分として生み出し、形成している条件や制約、特徴や方向性の基底にあるもの、基盤となっているもの、人間が生きている現実の地平といったものなのである。風土ないし歴史的・地理的条件とも言われている。人間がそこで生きて暮らしている現実の条件、無意識の背景や下地となっているもののことである。

もちろん、自然環境という場合、外の現実の自然だけでなく、内なる自然環境、すなわち自分自身の肉体の諸条件も含まれる。自分のカタチや構造、機能といった自分自身ではどうにもならない、もって生まれて来た自分自身の肉体もまた自然環境に含まれる。さらにまた、その肉体の機能の仕方、すなわち、生理や神経作用の無意識の「条件反射(パブロフの犬参照)」、そしてその意識されることのない「肉体のリズム」もまたそうである。肉体もまた、自分にとっては他者だったのである。

もどる。             つづく。