「条件反射」
〜4、未知の領域。
そうした、自分をつつんでいる曖昧(あいまい)で、ぼやけて、カタチが常に揺れ動いて混沌とした、とらえどころのない他者との関係性。あるいはまた、他者と自分自身が入り混じって錯綜し、明確に区別も識別もできない、ぼやけてボンヤリした領域。自己と他者との間のあまりに不明瞭な領域。 それは何かと言えば、それは、自己の意識も自覚されることのない、自分自身の「感じ方」の世界である。自分自身を規制し方向づけている未知の領域であって、意識されることのない暗黙の絶対的強制力であって、自分自身というものの前提を成している感覚や意識の生れ出る場所なのである。 それは、独自の内的な必然性でもあって、固有の自律性と特殊な様式、パターンや型式(かたしき)といったものを形成している「個性」といったものである。そして、それがまた、民族ないし個人の特徴的な情緒や心の持ち方、気分や感じ方、そしてまた、その生き方や生活の基本的な根拠となっているのである。 つまり、そうやって人間は、自分で自分を理由づけし、納得し了解しているのである。そうした考え方や感じ方の土台であって、それを包(つつ)んでいるのが、その民族特有の情緒や気持ちの在り方なのである。それが自分たちの自律性となっていて、そしてまた、自分たちが無意識のうちに「信じるもの」となっているのである。そしてそこから、自分たち民族の信仰や神話、そして宗教、そしてさらに道徳や法律や、社会のシステムといったものが形成される。 しかしまた、そうしたことが自分自身の中にあって、自分ではどうにもならない意識のあり方、無意識の世界の、自分の意識が届くことのない、わけのわからない未知の領域となっているのである。そして、これこそが自分たちの「信じるもの」、すなわち、自分自身の理由やアイデンティティーとなっているのである。 |