「条件反射」

〜5、型。


自分の中にあって、同時にまた自分のものではない、自分ではどうにもならない、自己と他者が入り乱れて錯綜し混沌とした、何もかもがボンヤリしていてあいまいな世界。自己と他者とが必ずしもハッキリしない世界。

それは精神でも肉体でもなく、意識でも外の自然でもなく、そのどちらでもなくて、と同時にそのどちらをも繋(つな)いでいる、そうした肉体の感受性や生理の領域のことなのである。それは精神にも肉体そのものにも属さない、それらから区別されて生成されてきた、それらとは別の世界なのである。肉体でも精神でもなくて、それとは別の「感覚そのもの」の世界なのである。

それは肉体の、神経と感覚の生理作用といったもので、それが自分の外の世界と作用しあって、ひびき合い、数千数万年の長き経験の反復継続される過程で固有のリズムやパターンとなり、最適化され様式化されてきたものなのである。そして、それが自分自身の肉体として受け継がれてきたのである。

このような感覚の感じ方といったもの。特殊化され、反復継続し、そしてそれが引き継がれていって、そして固定化し、定着して来たもの。それがその民族を特徴づける特殊で固有のパターン、あるいは、感覚とその感じ方の様式化された「型」なのである。いわゆる、気質や気性といったものである。

言い換(か)えると、情緒的特性、あるいはその民族を特徴づける心の持ち方、その動きの特性といったものなのである。しかしまた、そうしたことが人間を無意識の世界で支配しているのであって、そしてそれを条件づけ方向づけているのが、地理的・気候的条件、すなわち「風土」なのである。

もどる。             目次へ