「方向性」

〜1、感情だけ。


「方向性」とは、時間の流れのことであって、その瞬間ごとの断面だけをいくら見ても何のことかわからないのである。時間の流れの中の、変化の過程を見ることによって、はじめて方向性が見えてくるのである。

だから、方向性とは変化であり、移行であり、そしてまた、その動きを規制し決定づけている必然性なのである。現実とは時間の流れでもあって、その中で自分と他のものとが区別される内的必然性が現われてくるのである。内的必然性の原理といったものが、現実の世界にすがたカタチとなって現れてくるのである。

それは例えれば数学のベクトルであって、位置とカタチと共に方向を持つのである。時間と共に変化し移行してゆく方向性をもつのである。方向を持たないのは言わば、歴史を持たないのと同じであって、時間の概念が希薄なのである。目的も意図も理由も不明のままで、またそれをとらえることもできないのである。自分というのが意識されず、意識しようもなく、また、自覚もされていない状態である。

客観性があるように見えながらも、主観性の枠(わく)を越え出ることがないのである。思い込みと気まぐれ、行き当たりばったりの感情だけが支配する世界である。理性にまで達することがないのである。

目次へ             つづく。