「方向性」
〜２、集団の中。
| だからまた、客観性も普遍性も意識されることがなく、理解もされない。方向性があるように見えながら、同じ枠（わく）のなかをグルグルと、あちらこちらへとさ迷い続けるのである。主観性の外へ出ることがないのである。外から自分を見るということがないのである。だからまた、客観的に自分を見ることができず、自分で自分に問いかけるといったこともないのである。 自分というのが曖昧で、ハッキリせず、個人が集団の中に理没したままで、自分自身の、自己というのが省りみられることがないのである。自己と集団とが、精神の世界で区別されないままである。自己と他者が区別されず、自己意識が自覚される場面そのものがない。そうしたキッカケも動機も必要もない世界である。自己が意識されず、自覚されることもない世界である。 そしてまた、そうした社会システムにとっては、それは意識されてはならないものなのである。そうした自己意識の欠落していることが、こうした社会の前提なのであって、その条件や特徴ともなっている。 自分自身のなかに、目的や理由といったものがきわめて曖昧で、不規則で、混沌としていて、なんら合理性も論理的なつながりも見られない。思考の一貫性も、原理の必然性も見ることがないのである。 気まぐれな感情だけが支配する世界なのである。その場その場の雰囲気とか「空気」、もの言わぬ昔からのシキタリや、意識されることのない無意識の情緒や習慣が支配する世界である。 |