「春のゆくえ」

〜1、ふっくら。


冬から春へ。春のあたたかい陽ざしと豊かな水が生命をめざめさせる。再生し、復活し、誕生する。誰かから与えられたのではない。自分の中からめざめ、生まれ出てきたのである。

だから、カタチは丸みを帯びてふっくらしている。そのすがたカタチはまるで「一筆書き」のように、しなやかで、いまにも壊れてしまいそうな優しさで、すべてがムリなくつながって連続する美しい自由曲面を成している。

何か、外から無理やり押し付けられて型にはめられたすがたではなくて、自分の中から自分がめざめて外に出て来た、そうしたムリのない自分に素直なカタチなのである。

丸みを帯びるのは、先ず体積だけが増えて来て、すがたカタチの中に水分を多く含むのである。限界まで水分をため込んで、それでもってカタチを大きくしているのである。まるで赤ちゃんの身体のように。だからもっとも表面積が少なくてすむカタチ、すなわち、丸みを帯びたふっくらした自由曲面になのである。

目次へ             つづく。