「春のゆくえ」

〜2、情景。


だから春の植栽、木々や草花は光をよく透かす。光が透けて見えてくる。逆光になると、ほとんど色の鮮やかさだけが残り、それが薄く透けて見えてきて、光の白さが植栽全体を白く、まばゆく見せている。要するに、植栽の内部に水が多いのである。

また、春の大気に多く含まれる水蒸気、あるいは春カスミといったものが森や林を包んで光を乱反射し、あるいは、光が靄(もや)の中から回り込んできて、景色の情景といったものの輪郭線を後光のように明るくボンヤリと照らし出している。まるで夢の中で見るような情景である。

ところが、秋は反対で、日にひに植栽の中から水分がなくなってゆく。カラカラにしなびて、中に水分がなくなってカラッポになって、骨(幹)と皮(葉)だけになってしまう。雨が降って恵みの水に濡れても、濡れっぱなしで、外の世界との交渉はほとんどなく、無機質で、ほとんど死んだように見える。

もどる。             つづく。