「自律」

〜7、理由。


しかしまた、こういう人間が新しい時代の原理、人間にとっての新たな存在理由といったものを生成し、発掘し、生み出してゆくのである。まことに致し方なく、そうするのである。異質な世界を生きる、異質な人間にとってみれば、そうせざるを得ないのである。そうするしかないのである。

それ以外に生きて行く方法がないのである。それ以外に、自分の存在理由というのが無いのである。イヤ、もっと正直に言わなければならない。そうする以外に生きて行く方法がないのである。このような人間に社会は当たり前の仕事をさせてはくれないのである。

業種も職場環境といったものも非常に制限され限られたものになっている。「理由」などは二の次である、それ以前に家族を養い生きて行かなければならないのである。それが出来ない状況に追い込まれているということである。なにも好き好んでそのような生き方をする人間は、世の中にいないのである。

それは不幸の源(みなもと)、生きていることの不幸、限りなき底なしの不幸とも言える事態なのかも知れないが、そうするしかないのである。それが彼にとっての残された唯一の、生きている理由とならざるを得ないのであって、彼には、それしかないのである。それは必然なのであって、新しい原理の登場である。そうするしかなく、それ以外になかったのである。

もどる。             つづく。