「異人種」
〜18、たましい。
自分と他人、精神と肉体との区別が消えている。意味を失っている。そうした区別のない世界なのである。混沌としていて、曖昧で、ぼやけて、ぼんやりしていて、とらえどころのない、わけのわからない世界なのである。そうやって、自分で自分の中をのぞきこんだままでいるのである。 自分で自分を探し、自分を見つけ、確めようとしている。自分で自分の中を見ようとしている。自分の中で祖先の記憶を見ているのである。自分が現実の存在から切り離されて自分が誰かわからなくなる。そうした精神の世界をのぞき見ている。 だからまた、まことに仕方なく、どうにもならず、どうしようもなく、自分の心情を省みずに、精神は風土へと向かって行かざるを得ないのである。かつて自分たちが生きてきた祖先の魂(たましい)の世界へと。神話とか神々の世界、自分たちの根源へと向かうのである。 |