「異人種」
〜17、境界線上。
それは無意識の世界、人間の意識の届かない世界である。その風土が作り出した人間の肉体の感じ方や生理作用の世界なのである。そしてそうしたことが、その地で永続してくり返され、そしてそれが現実のカタチとなって、人間特有の肉体の骨格や血や肉といったものとしてカタチ作られたのである。肉体の中で統合された神経と生理の作用となっていったのである。体内を流れる血液のリズムや肉体の生理の調和といったものになったのである。それが情緒や感受性といったものなのである。 そうしたことが人間の意思とかかわりのないところから人間を支配し、人間を追い立て、導き、そして指向しているのである。それは自分ではどうにもならない本能や衝動とでもいったものである。自分でも訳のわからない、得体の知れない正体不明の、自分の中に住むもう一人の自分自身なのである。 そうしたことが人間を支配していると思えてならないのである。肉体でも精神でもなく、意識でも現実でもなく、自分でも他人でもなく、あるいはまた、自分でも外の自然でもなく、ちょうどそれらの中間にあって、そのどちらでもないもの、境界線上、接触面上の世界とでもいったものである。これが感覚そのものの世界である。 |