「さまようタマシイ」
〜５、区別。
| 精神にしかないものを、肉体の感覚に求めているというのは誤解である。精神でも肉体でもない中間地帯というのがあるのである。それはまた同時に、自分の精神と肉体が行きかい交流する領域なのである。そうやって今にも消えてしまいそうな自分自身の自意識を握りしめ確かめているのである。 精神と肉体の中間地帯、自分の心とカラダが自分のなかで交流する無意識の、意識されざる感覚の世界。まるで、思い込みと主観だけの一人ぼっちの世界。いまだ自分のなかで他者というのを知らず、自分で自分を見つめ、自分自身といったものを自覚することのない世界。いまだ自分で自分を意識するといったことのない世界。つまり、一人ぼっちの自分だけの世界である。 そして、しかもそれは、いまだ自己と他者が分裂する前の、自己と他者が入り混じり、区別されない状態での原始的で曖昧なぼんやりした自意識の世界である。 他者を意識することのない自意識なのである。だからまた、孤独とも言えず、自意識以前なのかも知れない。他者が存在しない世界での一人ぼっちは、一人ぼっちと言えず、また、自分自身を意識することもないだろうからである。相手としての他人がいて、はじめて自分が一人ぼっちで孤独であると感じることが出来るからである。そうした、自己と他者の区別のない世界、区別がはじまる以前の世界である。 |