17目次へ < 「春カスミの情景」
〜1、未知のもの。
遠くに見える山々や、
近くに広がる田んぼや川辺、そして街並み。
いつもそうだが、遠くに見える山々が気にかかる。
なぜだか自分でもわからないが、気になるのである。
遠くのおぼろげで、はるかに垣間(かいま)見る、
山々の輪郭が何か別世界のように見えてきて、
自分が誘われているように思えてくるのである。
まるでマボロシ(幻)のように、
カスミのなかから現れては消えてゆくのである。
こちらを見下して、まるで誘い、いざなうように。
まるで別の世界、空想の中の世界のように。
自分の心の中にある、もう一つの異質な
部分を見ているような気になってくる。
もしかするとボクは、他の生き方や、
感じ方といったものがあったのかも知れない。
もっと限りなく、永遠なものが。
それでいて、自分でもわからない未知のものが、
自分の中に住んでいるように思えてくるのである。
続く。
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