17目次へ < 続、 「春カスミの情景」
〜1、めざめ。
春のカスミの世界はおおらかで、
うすぼんやりしていて、
そしてどこか優しげである。
水蒸気で出来た白いカスミ(霞)が、
直射日光をゆるやかにさえぎって、
それを広げて、世界のすべてをまんべんなく、
おだやかにつつんでいる。
こうした情景は、
遠くに見える山々のすがたによく表れている。
うすぼんやりしていて、カゲがうすく、
どこかのっぺりしていて、何か自分自身の、
記憶の世界を見ているように思えてくるのである。
冬の寒さの中で固く閉じていた世界が、
そしてボク自身の心の中までが、
春の暖かい陽ざしに誘われて、
ゆるんで、開いて、そして満ちてくる。
そして生命が誕生し、めざめ、よみがえる。
続く。
|