17目次へ < 「新、春カスミの情景」
〜1、天使の衣(ころも)。
春カスミのしろ色とは、つまり、水分と光それが何なのか、
わけもわからずぼんやりしていて、
おぼろげで、それでも何かを求め、さがし、
自分を生み出し、自分を確かめ、自分をあらわにして、
外へ出ようとする精神の衝動である。
あるいは、追い立てられ、行き場を失くした精神が、
その張り裂けた傷口から、何かを押し出しているのである。
だから春のカスミはボンヤリしていて、
なにかを隠したままで、そしてやがて晴れて来て、
めざめたばかりの生命が、カタチとなり姿となるのである。
それが、世界の色と、光の明暗として表現されるのである。
光の明暗とは、世界のカタチであり、
そしてその色とは、カタチの質であり個性である。
それは、生命の証明なのである。
生命なきところに色は限られ、そしてそれ以前に、
人間の目の見え方そのものが、そのように出来ているのである。
人間の感覚器官というのは、
人間にとって必要なものしか見せてくれないのである。
続く。
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