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〜1、感覚の同一性。




人間が何かを見ているとき、
目だけで見ているのではない。自分の身体全体で、
すべての感覚の総合として、ものを見ている。
これは自分自身の一体性・全体性・統合性を意味している。
すなわち、これがアイデンティティー(自己の同一性)なのである。

ニオイや音、肌に触れる感触や気配といったもの。
そうした「感じ」といったものは、単独で感じられるものではなく、
他のすべての五感の統合されたアンサンブルとして、伝わってくる。
そうした、積み重ねられて来た記憶や、
最適化された自己の記憶の型(パターン)として、
自己の思考の様式の中でものを見ている。

そうあるべきもの、あるいは、そうでないものとして、
区別・識別して、ものを見ている。
そうでないと、見ることの意味がなくなる。
「見る」とは、つまり、自分と外の世界を区別して、
知るためのものだからである。

                 続く。