< 怪談「ものの気配」
〜4、必然性。
これは、自分の精神の世界を生き続けている、
もう一人の自分のすがたなのであって、
それが、見知らぬ、現実の他人のように感じられて、
闇の中とか、暗がりの奥から、
じっと自分を見つめ続けていて、
そして、なにかのはずみで、ふっと自分に迫って来る、
そう、思えてくるのである。
だからまた、勘違いしてはならないのである。
このような自分のなかでの、
自分自身に対する関係性こそが、
自己認識とか自意識なのである。
自分で自分を見つめ、確め、求め、
問い続けているのである。
それは、この世でたった一つしかない、かけがえのない、
何よりも大切な、自分自身の姿(すがた)なのである。
自分が他人と区別される、自分自身の「必然性」なのである。
そこにしかないもの、それ以外のところにないもの、
どうしても、そこにいなければならないもの、
それが、自分自身なのである。
「自己の同一性」なのである。
戻る。 お終い。(17目次へ)
|