目次。<  K夫人-71-b、「みずいろ-A」


~1b 透明。

自分と現実との間に何かがあって、それが自分を隠(かく)して見えなくしている。他人からも、そして自分自身からも見えなくしている。そうした自分というのを意識してしまうのでる。そうしたことが「透明」に感じられるというのは、外の現実が見えなくなって、自分の中で外の現実を透かして見ているからである。

「透明」なのは、外の現実ではなくて、自分で自分の心の中を見てるからである。わけもなく外の世界が透明に感じられて来るのはこのためである。外の世界を通して自分自身の心の中を見ているのである。「透明」に感じられるというのは、このことなのである。自分で、自分自身の精神の世界をみているのである。

いままで知ることのなかった自分の心の中というのが、薄い何かを透かして、うすぼんやりと見ているのである。それと気づかないままで。

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