目次。< 「みずいろ-A」



〜2 届かない。

「水色」は、けっして届くことのない何かを追い求め、願い、そして祈り続けるようなそんな色だった。かといって、優しく包んで抱いてくれる、そんな親しい色でもなく、もっと理知的で、内省的で、どこか沈んだようなそんな色であり続けた。なぜか理由もなく気になり、惹きつけられ、吸い込まれ、引きずり込まれて行く、そんな「色」である。にもかかわらず、けっして届くことがないというのが始めからわかっている、そんな色なのである。

それは、現実に見える水色の世界に、自分自身の精神の世界を見ていたのである。けっして届くことのない自己の永遠の世界を見ているのである。誘われ、導かれ、そして自分でも気づかないまま、それへと引きずり込まれてゆく。そしてそれは、僕がのぞみ、求め、欲して、そして祈り続けたものだったのである。

僕にはそうするしかなく、それ以外の生き方というのが閉ざされていて、あるいはそれだけが、真実の本当の自分自身のように思えたのである。だから僕としてはそうするしかなく、また、ずっとそうであり続けたのである。

それは自己の、閉じて沈んだ内閉的な世界であって、そこから外の世界を見ているのである。底無しの海の底から、あるいは果てしない空のかなたから自分を見ていたのである。だから、いつもどこかで自分で自分をのぞき込んでいて、協調性に欠け、集団プレイというのがダメで、いつも自分と他人とのあいだに見えない壁があったのである。

溶けこめず、なじめず、どこか違う自分というのを意識してしまうのである。だからやはり「水色」なのである。どこかさめていて、冷たいところがあって、けっして届くということがない。それでも、それがわかっていてなお、惹きつけられ、吸い込まれてゆくのである。そうした果てしのない、何かをあおぎ見るような、そんな色なのである。

 戻る。                       続く。